
我が家に桜文鳥が来た最初の日。
それは私が小学生2年生か3年生の頃でした。
ある日、学校から家に帰ると、見慣れぬカゴが居間にありまして。
「えっ?なにこれ?」
近くにいた母親に聞きました。すると母はこう答えたのです。
「親戚の~おばちゃんがくれたんだよ。2匹飼っていたけど、一匹と喧嘩して仲良くなくなったから、うちにくれたんだ」
母親は子供の頃にジュウシマツを飼っていたことがあり、それを知っていた親戚のおばさんが「それなら」ということで譲ってくれたのです。
カゴの中にいる文鳥は頭が黒くて頬っぺたが白く、羽はグレー色。
桜文鳥というんだよ、と母親が教えてくれたのですが、私は「どこが桜なんだろう」と不思議に思いました。
尋ねると「さあねえ、昔からそういうからねえ」と母親が答えましたが、もうそのことには興味がなかった私は、物珍しさと初めて動物を飼うということへの興奮で、顔をカゴに近づけて文鳥にじっと見つめました。
金網の籠の中の文鳥は見慣れない我が家と私の顔が怖いのか、警戒するようにカゴの奥でじっとしています。
「だめだよ。慣れてないから怒るよ」
指をいれようとした私を見て母親は注意してきましたが、すでに差し込んでいた私の指を文鳥は「ガルル!」と怒って激しくかみました。
「いたた!」
慌てて指をひっこめました。
噛むだけでなく、つねってきたので、指の先が赤くなっていました。
「怖いなー」
私が指をさすりながらそう言うと、母は「だから言ったでしょう?文鳥は気が荒いから、慣れるまではそっとしておきなさい」と教えてくれました。
その日から初めての文鳥との生活が始まったのです。
もともと親戚の家で飼われていたので、人間を怖がるということはなかったのですが、人の顔をちゃんと認識していたのか、我が家の家族に慣れるまでは時間がかかりました(あれは本当に痛い)
なので母親がかごから出そうとする時も「ガルル!」と怒って指を激しくかんで抵抗しましたし、出せたときも肩に載せてじっとしているだけで、なかなか家族には慣れようとはしませんでした。
肩に乗る時も人間がじっとしていないと安心できないのか、少しでも顔を動かしたりすると「ガルル!」と耳を噛んで、母親も「痛い!」と何度も叫んでました。
子供だった私も同じように肩に載せて何度も耳を噛まれましたし、指を出して噛んでつねられて「いたたたたたーっ!」と涙を流したことも何度もあります。
結局その文鳥は我が家の家族にはそれ以上慣れることはなく、それから数年後に亡くなりました。
今思えば我が家に来たときは5歳か6歳くらいで、一度も求愛ダンスをしなかったのでメスだったと思います。
外に出すために手をカゴにいれたら噛みまくられて、肩に乗せても、こちらが少しでも動くと耳にガルルと嚙みついてきたあの気の強さ。
それでも逃げずに肩や腕の上でじっとしている、不思議な静けさ。
幼鳥の頃からではなく、成鳥してから飼われていたと聞いていたので、人間を怖がりはしないものの、ずっと警戒心を抱いていたのかもしれません。
人生の多くの時を共に過ごすことになる「文鳥種族」との二度はない「最初の出会い」。
それから今に至るまで何匹も文鳥を飼うことになるのですが、一番最初に我が家に来たこの桜文鳥のことは忘れられません。
これが私が最初に出会った文鳥の思い出です。

